お握りに愛を込めて
「あっ、水沢先輩は、もう部活行ってください」
「だから、愁でいいって」
変なところ突っ込むよね。
「あ〜、愁先輩」
「はい」
嬉しそうな瞳で、私を見る先輩が、なんだか可笑しくて笑ってしまう。
なんか、この人と一緒にいると調子狂う。
「お握り握っておくので、部活行っていいですよ?」
今日だけは、手伝うよ。
無理矢理じゃない。
いやいやじゃない。
私が、この人たちに食べてもらいたい。
なんか、そう思うんだ。
「菜子ちゃん。いいの?タイムバーゲン」
「あっ……」
今、言われるまで、すっかり忘れてた。
あぁ、本日特売の牛肉が……
でも、いいや。
タイムバーゲンより、大切なものが、今、ここにあるような気がするから。
「いいんです」
「そっ?」
「そう」
今、この時を大切にしたいから。