お握りに愛を込めて
「ほら、これ使え」
先生は、そう言って、手に持っていた大きな瓶と塩が入っているタッパーを調理台の上に置いた。
瓶の蓋を開けてみると、中には、ふっくらとした美味しそうな梅干しが入っていた。
「うわっ、すごい!これ、先生が作ったの?」
「んなわけねぇだろ。うちの奥さんだ」
あぁ、そっか。先生結婚してたんだよね。
「これが、ほんと、よくできた奥さんでさ。握り飯作るって言ったら、この梅干しをど〜んと」
はいはい、惚気話は、よそでやってください。
「で、先生、なんで1日4.5合なんですか?」
「ん?」
まだ奥さん自慢をしたいと顔に書いてあるけれど、もう充分だから。
気になっていたの。
なんで、【1日4.5合の白いご飯を食べる】なんて言い出したのか。
「あっ、ああ。水沢から聞いたのか?」
「はい。朝昼晩で3合。朝練後、放課後練習前後に0.5合ずつって」