お握りに愛を込めて
「あ……鬼の目にも、涙」

「ん?何か言ったか?」

「いえいえ、別に」


涙ぐんで目が赤くなってる先生、レアだわ〜


鬼教師が涙ぐんでるなんて。

そんなに感謝されてるなんて。


そんな感謝されるようなことじゃない。

感謝されるのは、私じゃない。愁先輩。


私は、ただ……

ただ、愁先輩に頼まれたから?

愁先輩の手つきが危なっかしくて見ていられなかったから、手伝っただけ?



ううん……違うかな。

そんなの言い訳かも。


ただ、単純に手伝いたかっただけ。


一生懸命な愁先輩とその仲間たちを、少しだけ手伝いたいって、そう思っただけなんだ。






「炊けた!」



熱々炊きたてご飯を手に取る。


「熱っ!熱っ!」

手の平が真っ赤になるけれど、美味しいお握りを食べて欲しいから。

一つ一つ、丁寧に握っていく。



先生の思い、愁先輩の気持ちをぎゅっと、お握りに込めて。

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