お握りに愛を込めて

午後6時半

部活終了を知らせるチャイムが鳴る。


先ほど握ったお握りをトレーに並べて、先生と一緒にグラウンドへ運んだ。



なんだろう。
少し緊張する。


みんな、喜んで食べてくれるかな?

もし残ったら、どうしよう。



そんな緊張も、愁先輩の「菜子ちゃ〜ん」って、緊張感のない大きな声でほぐれていく。


全く……
愁先輩は、不思議だ。


部長らしくない部長って感じなのに、なのに先輩を見ると安心する。





「いただきますっ!」

そう言って、パクっと一口、お握りを口に運んだ愁先輩は、


「美味いっ!やっぱ菜子ちゃんのお握り、最高っ!」


満面の笑みを浮かべそう言って、パクパクとお握りを頬張っていく。

他の部員たちも、次々とお握り手に取り食べていく。


美味しそうに口を動かしてくれる丸坊主軍団が嬉しくて、作ってよかったと、心から思えた。

タイムバーゲンよりも、何倍も価値のある時間が、ここにはあった。
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