お握りに愛を込めて
「ありがとう、菜子ちゃん。ごちそうさま」
愁先輩が、そう言って手を合わせた。
ふとトレーを見ると、1升分のお握りがきれいになくなっていて、部員たちからの『ごちそうさま』を聞くとこちらこそ、食べてくれてありがとうって気持ちでいっぱいになった。
「あのっ、愁先輩っ」
トンボを持って、グラウンド整備に向かう彼を呼び止めた。
「ん?何?菜子ちゃん」
「私、明日の朝も、お握り作りますからっ」
なんでこんなこと自分で言ったのかも分からない。
ただ、先生の思いを聞いたり、こうやって頑張っている部員を見ていたら、手伝いたいって思った。
少しでも私に出来ることがあれば手伝いたいから。
「ほんと?」
嬉しいと言うように、爽やかな笑顔を見せる愁先輩。
あぁ、これだよ。
きっと、この笑顔にやられたんだよ。
潤んだ瞳と、この笑顔。
【愁マジック】だね