お握りに愛を込めて
「へぇ〜、愁先輩ねぇ〜」
「何よ」
何か言いたげな言葉ですな、さとみさん。
「別に〜。なんで菜子がヘタレの愁先輩なのかなぁって思っただけ」
「ヘタレじゃないしね」
「そう?」
「そうだよっ。ただ潤んだ瞳向けてくるだけだし」
「あー、【ご利用は計画的に】のCMの子犬みたいな瞳ね」
そうそう。クリクリお目目のチワワみたいな。
って、先輩は犬なのか?
そういえば、小さいころ飼っていたプードル犬のプー太郎に似てるわ。
あ〜、だから見捨てられないのか〜。
ってことは、恋じゃないのかな?
でも、
白球を追う時の真剣な瞳は、プー太郎なんかじゃない。あれは、狼。
あの瞳にドキンと胸が苦しくなったんだ。