お握りに愛を込めて
「大、丈…夫……です」
痛かっただけで、多分なんともない。
なのに、先輩は私の体を抱き上げようとした。
「ちょっ、ちょっと先輩っ!大丈夫ですから」
今は少し痺れているだけで、もうちょっとしたら歩けるから。
「駄目っ!腫れてきてる」
「いや、ほんと、歩けますからっ」
だから、抱き上げないで下さい。
お姫さま抱っこなんて、恥ずかしすぎます。顔から火が出ます。ゆでダコになります。ドキドキし過ぎて寿命が縮まります。
「ほらっ」
背中に乗れと言わんばかりに、私の目の前に背中を向けてかがんだ愁先輩。
「え?」
おんぶですか?
いやいや、ほんと、大丈夫だから。
それに、歩けるって言ったよね?
「だから、歩け……」
「つべこべ言わないで、乗れっ!」
「は、はいっ」
余りの迫力に思わず返事をして、背中に乗った。