千の夜をあなたと【完】
イーヴは父の瞳を見つめ、はっきりと言った。
いつになく強情な様子の息子に父はしばらく戸惑っていたが、やがてはぁと息をつきため息交じりに言った。
『……わかった。だがそれにはティンバートの承諾も必要だ。それにお前はまだカレッジに通う身だ、結婚はしばらく先になる』
『わかっています』
『ティンバートにその旨、打診しておこう。それでいいな?』
『はい』
――――それから5年経った、去年の冬。
二人は正式に婚約を行い、レティは晴れてイーヴの婚約者となった。
両親もその頃には二人の結婚を渋々ながら承諾してくれるようになっていた。
しかしレティは相変わらずで、この婚約を厭わしく思っていることを隠しもしない。
あと一か月後には婚儀を挙げるというのに、自分に向ける目は相変わらずだ。
「……」
イーヴはレティから貰ったペンダントをぐっと握りしめた。
――――ティンバート家に客人として居候して、ほぼ一年。
アカデミー・ノースウェルズにはイーヴが学びたかった学科があり、入学が決まった時、リカードはイーヴに屋敷の提供を申し出てくれた。
イーヴはその申し出を受け、一年前からティンバートの屋敷に住むようになった。