千の夜をあなたと【完】
――――数時間後。
既に陽は沈み、窓の外はぽつりぽつりと雨が降り出している。
レティはリラを置き、窓辺に寄った。
既にリュシアンとセレナは退室し、部屋にいるのはレティとイーヴだけだ。
『……なに、その音。リラってそんな音出るんだ?』
『ううっ……』
『リラを作ったのはヘルメスだって言うけど。ヘルメスもびっくりだろうな、リラが想像だにしない使われ方をしているとはね』
『いや、フツーに弾いてるだけなんだけど……』
『……上下逆さまにして弾くのをフツーとは言わない。お前、まずはリラの何たるかから勉強したら?』
イーヴは皮肉を言いつつも、丁寧にリラを教えてくれた。
リュシアンとセレナはそんな二人を気遣って退室したのだが、もちろんレティはそんなことは知る由もない。
レティは窓の外を見、大きく伸びをした。
夜闇の中、窓辺に打ちつける雨の音は半刻前より確実に大きくなっている。
急に、こんなに天気が悪くなるなんて……。
と思った、その時。
ピカッと辺りが光るとともに、ドドーンという音が遠くから響いてきた。
「……っ!?」