千の夜をあなたと【完】
「待って? ……なんで俺がお前を待つ必要があるわけ?」
「……っ……」
相変わらずヘソが曲がり切っている。
いや、婚約者相手にここまで非情になれるのはヘソが曲がっている以前の問題かもしれない。
涙目になるレティに、イーヴはうっすらと笑って言った。
「人に頼むなら頼むなりの態度があるだろ? それなりに礼は尽くしてもらわないとな」
礼って……。
レティは目を見開いた。
しかし何をどうすればいいのかわからない。
レティが戸惑っていると、イーヴはしばしの沈黙の後、はぁと息をついた。
「ま、それはいいよ。……で、何? お前は俺にどうしてほしいわけ?」
イーヴは目を細め、見下ろすようにレティを見る。
その眼はいつものように意地悪だが、レティを拒絶している感じはしない。
レティは手をぐっと握りしめ、震える声で言った。