千の夜をあなたと【完】
10.イーヴの提案
<side.リカード>
3月もあと数日となったある日。
ティンバート伯爵リカードは、応接室で警備隊の長・ダレスからナイジェルの息子・モルガン達の死について報告を受けていた。
ダレスが帰った後。
リカードは大きなため息をつき、天井を見上げた。
「既に6人、か……」
正確に言うと、モルガンの従者達はティンバートの者ではない。
けれど奴にとってはティンバートに属するだけで復讐の対象となるのだろう。
はっきり言って、奴は狂っている。
10年前の報復だとしても、奴は人を殺し過ぎている。
そしてナイジェルとその息子が殺された今、これから狙われるのはリカードと子供たちだ。
「……」
子供たちだけは何としてでも守らなければならない。
特にレティは夏にブラックストン侯爵家に嫁ぐ予定だ。
ティンバート家から侯爵家に嫁ぐのはレティが初めてで、リカード自身もこの婚儀をずっと待ち望んでいた。
リカードは立ち上がり、エスターを呼ぶよう控えていた侍女に指示を出した。