千の夜をあなたと【完】
――――数分後。
エスターが応接室に現れた。
「すまないな、エスター卿」
「いえ、……何かございましたか?」
「エインズワースの貴殿が感づいてないはずはなかろう。これを見て欲しい」
言い、リカードは胸元から書簡を取り出した。
それはナイジェルの死体の懐に入っていたものだ。
エスターは書簡をにざっと目を通した。
いつも冷静で穏やかなその瞳が、しだいに陰りを帯びていく。
「リカード様、これは……」
「一連の事件の犯人は、その男だ。そして男が予告しているのは9人。……あと3人だ」
リカードの声に、エスターは口元を押さえ、じっと考え込んだ。
……その瞳によぎる鋭い光。
エスターはしばし考えた後、顔を上げた。
「……恐らく、次はリカード様、そしてリュシアン様を狙ってくると思われます」
「……」