千の夜をあなたと【完】



「これは、イーヴ様。まさかいらしていたとは……」

「御託はいい。その書簡、俺にも見せろ」

「……は」


エスターが差し出した書簡を、イーヴは奪い取るようにして手に取った。

書簡の隅から隅まで、じっと目を通す。

いつもは物憂げなその青灰の瞳が、読み進めるに従って大きく見開かれていく。


「……リカード卿。ひとつ確認したい」

「は、何なりと」

「この書簡に書かれていることは事実か? 10年前、一体何があった?」


イーヴの言葉に、リカードはひとつため息をついた。

ここまで来たらもう隠し通せるものでもない。

リカードは10年前の事件の真相について、イーヴとエスターに話した。


――――話を聞き終わった後。

イーヴは腕を組み、ため息交じりに言った。


「……となると、この男の報復もある意味正当といえば正当だ。殺し過ぎではあるけどな」

「……はっ……」

「こういった手合いの者は、多分目的を達成するまで諦めることはないだろう。となると、方法はひとつしかない」


< 117 / 514 >

この作品をシェア

pagetop