千の夜をあなたと【完】
「これは、イーヴ様。まさかいらしていたとは……」
「御託はいい。その書簡、俺にも見せろ」
「……は」
エスターが差し出した書簡を、イーヴは奪い取るようにして手に取った。
書簡の隅から隅まで、じっと目を通す。
いつもは物憂げなその青灰の瞳が、読み進めるに従って大きく見開かれていく。
「……リカード卿。ひとつ確認したい」
「は、何なりと」
「この書簡に書かれていることは事実か? 10年前、一体何があった?」
イーヴの言葉に、リカードはひとつため息をついた。
ここまで来たらもう隠し通せるものでもない。
リカードは10年前の事件の真相について、イーヴとエスターに話した。
――――話を聞き終わった後。
イーヴは腕を組み、ため息交じりに言った。
「……となると、この男の報復もある意味正当といえば正当だ。殺し過ぎではあるけどな」
「……はっ……」
「こういった手合いの者は、多分目的を達成するまで諦めることはないだろう。となると、方法はひとつしかない」