千の夜をあなたと【完】



<side.エスター>



リカードの部屋を辞した後。

エスターは自室へと戻り、エリオットを呼んだ。

銀髪の青年はすっと物陰から現れ、エスターの前に跪いた。

エスターは黒髪をばさっと解き、濃紺の長衣の胸元を少し緩めながら口を開いた。

その目はリカードやイーヴに見せたものとは違い、昏く鋭い。


「……予定変更だ。決行を早めろと奴に伝えろ」

「……といいますと?」

「来週、ブラックストンの騎馬兵が来る。そうなったら一巻の終わりだ」


エスターは忌々しげに言い、壁際の長椅子に座った。

脚を組み、エスターが差し出したグラスの水を一口飲む。

実際、エスターの思い通りに事が運ぶのかはわからない。

けれどあの氷眼の男の狙いは明確だ。


「……」




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