千の夜をあなたと【完】



半刻後。

エスターはワインを片手にセレナの部屋を訪れた。

セレナはエスターの突然の訪問に驚いた様子だったが、すぐにドアを開けて中へと迎え入れてくれた。


「こんな時間にいらっしゃるとは珍しいですね。何かございましたの、エスター様?」


セレナは首を傾げてエスターの顔を見上げる。

エスターはにっこり笑い、口を開いた。


「良いワインが手に入りましたので、ご一緒にいかがかと思いまして」

「まあ、本当に?」

「ついでに『ユリアナ』の詩編についてお話ししましょうか?」


エスターの言葉に、セレナは嬉しそうに目を輝かせた。

輝く緑の瞳がエスターを見上げる。

エスターは眩しいものでも見たかのように目を伏せた。


――――あの人と同じ、瞳……。


エスターはワインの栓を抜き、テーブルの上に用意されたグラスにワインを注いだ。

ひとつをセレナの前に、ひとつを自分の前に置く。



< 125 / 514 >

この作品をシェア

pagetop