千の夜をあなたと【完】
半刻後。
エスターはワインを片手にセレナの部屋を訪れた。
セレナはエスターの突然の訪問に驚いた様子だったが、すぐにドアを開けて中へと迎え入れてくれた。
「こんな時間にいらっしゃるとは珍しいですね。何かございましたの、エスター様?」
セレナは首を傾げてエスターの顔を見上げる。
エスターはにっこり笑い、口を開いた。
「良いワインが手に入りましたので、ご一緒にいかがかと思いまして」
「まあ、本当に?」
「ついでに『ユリアナ』の詩編についてお話ししましょうか?」
エスターの言葉に、セレナは嬉しそうに目を輝かせた。
輝く緑の瞳がエスターを見上げる。
エスターは眩しいものでも見たかのように目を伏せた。
――――あの人と同じ、瞳……。
エスターはワインの栓を抜き、テーブルの上に用意されたグラスにワインを注いだ。
ひとつをセレナの前に、ひとつを自分の前に置く。