千の夜をあなたと【完】
レティはくるくると髪を指先でいじりながら、この間の日曜礼拝で行ったティンズベリー教会を思い出した。
ティンズベリー教会では様々な薬草を栽培しており、その種類の豊富さからイーヴはよくティンズベリー教会で薬草を調達している。
ちなみにイーヴは薬草だけではなく、医学や化学にも詳しい。
丸薬作りなどは総合的な知識が必要となるらしく、イーヴは教会に行くと司祭や修道女たちにその知識を教えている。
イーヴが天才的に頭がいいのは確かだ。
いずれはグロスターに戻りブラックストン侯爵家を継ぐのだろうが、グロスターに戻ってもイーヴはきっと薬草学を学び続けるだろう。
そんな予感がする。
と思っていたレティの耳に、女性達の話し声が入ってきた。
見ると、妹のセレナ付きのメイドのシェリーとハンナが厩舎の脇で何やら会話をしている。
レティは思わず耳をそばだてた。
「……聞いた? あの噂」
「恐いわね、皆殺しだったんでしょ?」
二人はひそひそと話をしている。
レティは息をひそめて二人の会話を聞いていた。