千の夜をあなたと【完】
それは男にしてみれば警告のつもりだったのかもしれない。
けれどイーヴはその言葉に一瞬で頭に血を上らせた。
――――ここまで侮辱され、黙ってはいられない。
イーヴはその青灰の瞳に怒りを漲らせ、剣を構えた。
その様子を、レティが横で息をつめて見つめていたことにイーヴは全く気付かなかった。
「貴様……っ!」
イーヴは剣を振りかざし、男に切り掛かった。
瞬間。
男の短剣が宙に閃き、その刃を横殴りに払った。
――――凄まじい力。
圧倒的な腕力の差を感じ、イーヴは内心で青ざめた。
そんなイーヴの腕に、男が容赦なく短剣を振り下ろす。
「……っ!」
宙に鮮血が飛ぶと同時に、左腕に鋭い痛みが走る。
イーヴは苦痛に眉を寄せ、男を見上げた。