千の夜をあなたと【完】
12.『報復するもの』
あれから、どれだけの時間が過ぎたのか……。
――――夜明け前。
イーヴはぐっと唇を噛みしめ、窓の外を凝視していた。
その唇の端から血が滴り落ち、ぽたりと服に染みを作る。
「イーヴ様……」
従者のゼナスが心配そうにイーヴを見る。
しかしイーヴはゼナスを見ることなく、ひたすら窓の外を凝視していた。
あれから。
リカードの死が屋敷中に知れ渡り、屋敷は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
リカードは死に、そして……
セレナはエスターに保護されており無事だったが、リュシアンは行方不明だ。
……そして。
レティはあの男に連れ去られ、行方が知れない。
「……っ、レティ……」