千の夜をあなたと【完】


イーヴは頭の中が真っ白になるのを感じた。

黒い衝撃が、イーヴの心を完膚なきまでに破壊していく。


何も、考えられない……。


いつものイーヴであれば、それが真実であるのかを疑ってかかっただろう。

しかし今のイーヴにそんな心の余裕はなかった。

呆然と目を見開いたイーヴに、エスターはひとつ息をついた後、手にしていた包みを開いた。

――――包みから出てきたのは、赤銀に光る剣。

クームブランだ。


「イーヴ様。この剣は『報復するもの』と呼ばれる剣です」

「……」

「復讐の思いを込めてこの剣を揮う時、自らの奥に眠る力が目覚めると言われています」

「……」

「私はこれから、セレナ様を保護しつつリュシアン様を探す予定です。もちろん、リカード様とレティ様の葬儀も行いますが……。この剣は、イーヴ様がお預かりください」


言いながら、エスターは剣をそっとイーヴの机の上に置いた。

イーヴは吸い寄せられるようにその赤銀の刃を見つめた。


――――報復するもの。


その言葉は衝撃で引き裂かれたイーヴの心に、黒い水のように染みていった……。

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