千の夜をあなたと【完】
――――男が消えた後。
レティは横たわったまま、ぐるりと部屋の中を見渡した。
部屋は粗末な木と藁でできており、レティは藁でできた簡易なベッドの上に寝かされていた。
部屋の隅には簡単な竈があるが、蜘蛛の巣が張っておりしばらく使われた形跡はない。
部屋はさほど広くなく、大人が5人も寝れば一杯になってしまうだろう。
それにしても……
ここはどこなのだろうか。
波の音がするということは……海の近くなのだろうが……。
そして、一刻ほど経った頃。
部屋のドアがキィと開き、男が姿を現した。
男は片手に何やら大きな籠のようなものを持っている。
怪訝そうに見るレティの傍に男はぽんと籠を置き、胡坐をかいて座った。
「とりあえず、市場で売っていたものを一通り買ってきた」
「……?」