千の夜をあなたと【完】
2.憎しみの重さ
食事の後。
男はレティに木綿でできたチュニックを差し出した。
レティが着ている白い夜着は血で汚れているため、着替えろということらしい。
レティが服を受け取ると、男は部屋の外へと出て行った。
――――思ったより紳士的だ。
レティは肩の痛みを堪えながら、ゆっくりと木綿のチュニックに着替えた。
チュニックはごわごわしており、いつもレティが着ていた服とは雲泥の差だ。
しかし他に選択肢がない以上、この服を着るしかない。
そして、一息ついたところで。
男はライナスと名乗り、これまでのことについて話し始めた。
自分の境遇、過去、そして……
……あの夜のこと。
一通り聞き終わったレティは、混乱のあまり頭を抱えた。
父とナイジェルが過去にそんな悪事に手を染めていた、など……。
とても、信じられない。
けれど確かに『赤の間』の2階にはあの剣があった。
それに父は、戦の場では人が変わったようだったと聞いたこともある。
けれど……。