千の夜をあなたと【完】




「安心しろ。おれは怪我している女を襲う趣味はない」


ライナスは楽しげに笑いながら言う。

しかしレティはじっと上目づかいでライナスを見た。

となると、怪我が治ったら襲うつもりなのだろうか?

思わず自らの身を抱きしめたレティに、ライナスはくすりと笑った。


「犬のような女を襲う趣味もない。おれは狂剣士と言われてはいるが、一応人間だからな」

「……っ」

「獣に手を出すほど、おれは女に飢えていない。お前はどうだか知らないがな」


レティは目を見開いた。

獣って……。

伯爵家のレディに対し、はっきり言って物凄い侮辱だ。


けれど襲うつもりがないのなら、ひと安心だ。

レティはほっと息をつき、肩を下ろした。



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