千の夜をあなたと【完】
3.後悔
<side.イーヴ>
暖かい春風が黒煉瓦で作られた回廊を通り過ぎていく。
イーヴは回廊を歩きながら、眼下に広がるグロスターの街を見下ろした。
ブラックストンの居城はグロスターを見下ろす高台の上にある。
一年ぶりに見るその景色に、イーヴはため息をついた。
一年前の今頃は……。
ティンズベリーで新しい生活を送り始めた頃だ。
レティと、リュシアンと、セレナと……。
イーヴにも弟はいるが、イーヴも弟も厳格な侯爵家で育てられたため、レティ達兄弟のように仲良く過ごすことはない。
イーヴにしてみれば、レティ達兄弟の方がよほど兄弟らしく思えた。
レティと薬草摘みをしたり、リュシアンと馬で野駆けに行ったり……。
あの輝かしい日々。
しかしそれは思いもかけない形で終わりを告げた。
「……」