千の夜をあなたと【完】
教会についたレティは、教会の入り口でイーヴから大きな籠を渡された。
首を傾げるレティに、イーヴはひらひらと手を振って教会の中へと歩いていく。
「その籠に一杯になるまで、カモミールを摘んどいて。俺は薬のレシピをシスターたちに説明してくるから」
「え、ちょ、ちょっと……っ」
「間違えて他の薬草を摘むんじゃないよ。終わったら中に持って来て」
イーヴはいつでもマイペースだ。
というか肉体労働は自分だけらしい。
……なんかムカつく。
と思いつつも、イーヴは畏れ多くもブラックストン伯爵様だ。
普通なら『えー』とか言った時点で斬首だろう。
と考えるとイーヴは優しい方なのかもしれない。
――――などと考えないと、とてもやってられない。
レティは籠を背負い、はぁと息をついた。