千の夜をあなたと【完】
イーヴの瞳に昏い影が落ちる。
もともと物憂げな瞳に昏い鋭さが加わり、城内の者たちは一年前と全く様子の変わったイーヴに戸惑いの目を向けるようになった。
けれどイーヴはそれを隠すことなく、ひたすら己のやるべきことに集中していた。
イーヴはグロスターに戻るとすぐに、ブラックストンの情報網を管理しているヘンリーという男を呼び出した。
ヘンリーは数年前のスコットランド戦役で父の参謀として戦いに参加した壮年の男で、今は父のもとで様々な情報を管理している。
イーヴはヘンリーに『諸島の王』と『氷眼の狂剣士』について徹底的に調べるよう指示を出した。
……そして、今日。
イーヴは2階にある、父の執務室へと入った。
「どうした、イーヴ」
突然現れた息子に、父のダグラスは片眉を上げた。
その頭はここ数年で白いものがちらほらと混じり始めている。
イーヴは軽く一礼し、顔を上げた。
「父上。一つお願いがあります」
「……何だ?」
「単刀直入に言います。俺に一個小隊をください」