千の夜をあなたと【完】
父の言葉に、イーヴは唇を歪めてうっすらと笑った。
予想の範囲内ではある。
しかし、あの事件の直後に縁談をよこすなど……デリカシーのかけらも感じられない奴らだ。
などと思っているイーヴの前で、父は続けて言う。
「ブライス侯爵の長女で、ディナリア嬢という。今年18歳になる。わしも一度会ったことがあるが、なかなか気立てのいい、綺麗なお嬢さんだったぞ」
ダグラスの言葉に、イーヴは内心で息をついた。
父が『綺麗なお嬢さん』と言う女は大抵人形のような女だ。
……レティでないなら誰でも同じだ……。
イーヴは冷やかに笑い、口を開いた。
「俺は別に、どんな女でも構いませんよ。たとえ尻尾が生えてようが、角が生えてようが」
「……」
「女だろうが女でなかろうが、悪魔だろうが魔物だろうが。それが条件でしたら、俺は飲みます」
「……」
「では父上、一個小隊の件、宜しくお願いします」
イーヴは深々と一礼し、執務室を辞した。
あとは……。