千の夜をあなたと【完】




エスターは横たわるセレナに指を伸ばした。

これからまだ、やらねばならないことがある。

あの男の復讐は終わったのかもしれないが、エスターにとってはこれからが正念場だ。


「セレナ……」


エスターがそっと頬に触れると、セレナはそのけぶるような睫毛を動かし、目を開けた。

――――いつ見ても美しい、緑の瞳。

エスターはその瞳に自分の心が吸い寄せられるのを感じた。

あの人と同じ瞳だからなのか、それとも……。


「エスター様……」


セレナの美しい瞳にみるみるうちに涙が滲む。

エスターはセレナの頬に手を伸ばし、目尻から零れ落ちた涙をそっと拭った。



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