千の夜をあなたと【完】
――――深夜。
レティは少し肌寒さを感じ、そっと目を開けた。
まだ辺りは暗く、夜が白んでくる気配もない。
レティはそっと起き上り、部屋の入り口の方へと向かった。
「……」
ライナスはいつも部屋の入り口に粗末な布を敷いて横たわっている。
ベッドはずっとレティが占領し、ライナスはベッドに近づくことはない。
あの時の言葉通り、ライナスはレティに指一本触れようとはしなかった。
もちろん怪我をしていたときは手当てしてくれたが、それ以外の時はライナスからレティに触れることはない。
「……っ……」
レティは寝ているライナスの傍に膝をついた。
ライナスはレティに背を向けるように、部屋のドアの方を向いて横たわっている。
……父と、叔父の仇……。
きっとライナスを殺せば、レティはここから逃げることができるだろう。
ライナスが寝ている間にこの喉元に剣を突き立ててしまおうか……。
そう思ったことは一度や二度ではない。
……けれど。