千の夜をあなたと【完】
ライナスが自分からレティに触れることは、これまでなかった。
驚き、目を見開いたレティにライナスは静かな声で言う。
「また泣いていたのか。……こうして泣くのは、8度目だな?」
ライナスの言葉にレティは息を飲んだ。
まさか、ライナスは知っていたのだろうか。
ずっと寝ているとばかり思っていたのだが……。
硬直するレティに、ライナスは続けて言う。
「猫をやっても、花をやっても、楽器をやっても……。お前はこうして夜になると、一人で泣き出す」
「……っ」
「どうすればいい? ……どうしたら、お前は泣かなくなる?」
ライナスは言い、じっとレティを見つめる。
その優しさを帯びた気遣うような瞳に、レティは心のどこかが揺れるのを感じた。
ライナスはレティの頬を形を確かめるようにそっと撫でながら言う。