千の夜をあなたと【完】




「お前には、おれを殺す機会などいくらでもあったはずだ」

「……ライナス……」

「おれは、お前がおれを殺そうとするなら、お前の剣を受けるつもりでいた。お前にはそうするだけの理由も動機もある」


ライナスの言葉を、レティは目を見開いて聞いていた。

信じられない……。

ライナスは少し笑い、レティの目を正面から見た。

――――真剣で、どこか切ないその瞳。

食い入るように見つめるレティに、ライナスはその形の良い唇を開いて言った。


「命の罪は、命でしか贖えない。……おれも、自分自身の罪はわかっている」

「……」

「だがお前は、そうしなかった。ただ一人で、こうして泣くだけで……」

「……っ……」


レティは言葉を詰まらせた。

ライナスは知っていたのだ。

……自分が夜に泣いていたことを。


< 177 / 514 >

この作品をシェア

pagetop