千の夜をあなたと【完】



薬草園は500m平方くらいの広さで、この辺りの教会の中では一番広い。

レティは籠を背負い、カモミールが並んでいる方へと向かった。

背を屈めてカモミールを摘み、背の籠へと放り入れていく。

しばらくそうしたところで、通路の横の方から小さな子供が歩いてくるのに気付き、レティは顔を上げた。


「ソフィア?」


レティが声をかけると、少女ははしばみ色の瞳を恥ずかしそうに細めた。

ソフィアは2年前にこの教会付の修道院に引き取られた孤児で、今年で7歳になる。

綺麗な銀色の髪と榛色の瞳から親はけっこうな美形だったろうと想像できるが、教会の前に捨てられていたため親の顔はわからない。


「レティさま、イーヴ様のお手伝いしてるの?」

「お手伝いっていうか、命令だけどね」


ははと笑ったレティにソフィアもにこっと笑った。

ソフィアの笑顔を見るとなんだか心が温かくなる。

ソフィアはレティを見上げながら口を開いた。



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