千の夜をあなたと【完】
『イーヴリオン様、明らかに雰囲気が変わりましたよね?』
『以前はまさに天才少年という感じで、利かん気もありましたけれど。今はどこか危うげな影が漂っているというか、なんというか……』
『一気に大人っぽくなりましたわよね? 一体何があったのかしら?』
女達は無責任に噂し合う。
イーヴはそれに辟易しつつも、完璧な社交辞令で舞踏会をやり過ごした。
……まるで意味のない舞踏会。
ティンズベリーの屋敷で主催された舞踏会とは全く違う。
あの舞踏会には、レティもいた。
レティは嫌そうな顔をしながらも、イーヴが手を差し出すとその手を取り、踊ってくれた。
あの生き生きとした表情。
至近距離でイーヴを見上げた褐色の瞳、うっすらと赤らんだ頬……。
「……っ……」
イーヴは胸元からペンダントを取り出し、ぐっと握りしめた。
レティとは自分の身分のこともあって、いつでも結婚できると思っていた。
例えレティが嫌がっても、結婚さえしてしまえばいつかは振り向かせてみせると思っていた。
けれど……。