千の夜をあなたと【完】
自分がどれだけ甘かったのか、自分の愚かしさが身に染みる。
イーヴは唇を噛みしめた。
なぜもっと早く、レティに自分の気持ちを伝えなかったのか。
レティが好きだ、と……。
もし伝えていたら、レティは今、自分の隣にいたかもしれない。
あるいは、あの雷の夜……。
レティを無理やりにでも自分のものにして、そのままグロスターに攫って来れば……
今頃、こんな思いはしなくて済んだのかもしれない。
伝えられなかった気持ち。
言えなかった大切な言葉。
それは切ない痛みとともに、イーヴの胸に残っている。
今となってはもう、心の中で呼びかけることしかできない。
「レティ……」