千の夜をあなたと【完】



「あれ、あまり甘くない……」

「そっかー。でもせっかくソフィアが採ってくれたものだし……」


と言いかけたレティだったが。

掌の上の青紫色の実を見、首を傾げた。

……今は3月だ。

この時期にブルーベリーの実が生るだろうか?

と思った、その時。

ソフィアーが喉を抑え、苦しそうに蹲った。

ぎゅっと胸元を握りしめ、嘔吐する。


「ソ、ソフィア!?」

「……レ、レティ……さま……」


ソフィアは苦しげに胸を抑えながらレティを見上げる。

その顔は青ざめ、とても苦しそうだ。

まさか、この実が……?


レティはとっさにソフィアを抱き上げ、腕に抱え込むようにして教会の方へと走り出した。

薬草園の小道を駆け抜け、教会のドアをバンと足で蹴り開ける。

レディらしからぬ所作だが、この際構ってはいられない。


< 21 / 514 >

この作品をシェア

pagetop