千の夜をあなたと【完】
レティの心には、イーヴがいる。
もう叶わないとわかっていても……
ライナスの唇がレティの唇に触れようとした瞬間、レティは無意識のうちに唇を噛みしめた。
「……」
ライナスは少し身を起こし、レティをじっと見つめた。
……レティの心を見透かすかのように。
そしてしばらくの沈黙の後、少し笑って口を開いた。
「……そんな顔をするな」
言い、そっとレティの髪に触れる。
ライナスはレティの髪を撫でながら、安心させるように優しく笑った。
「そんな顔をしているお前に手を出せるほど、おれは神経太くない。……何もしないから、好きなだけ泣け。お前の気が済むまで」
「……っ、ライナス……」