千の夜をあなたと【完】
「一人で泣くなと言っただろう。……お前があの男を忘れるまで、いくらでも付き合ってやるから」
ライナスは言い、そっとレティの背を抱き寄せた。
レティは目を見開いたままライナスの腕の温かさを感じていた。
……優しく力強い腕。
……どこか懐かしい、潮風と太陽の香り……。
胸にじわりと熱いものが広がっていく。
――――やはりライナスは、優しい人だ。
その優しさにこれまでにない強さで惹かれていく。
レティはライナスの優しさを感じながら、その胸に顔を埋めた。