千の夜をあなたと【完】
息せき切って教会に駆け込んだレティを、シスターや司祭たちが驚いたように見る。
その中にはイーヴの姿もある。
イーヴはレティとその腕に抱えられたソフィアの姿を見ると、踵を返して歩み寄ってきた。
「どうした?」
「ソフィアが小川の脇に生ってた青紫色の実を食べたの。これ……」
と、レティが青紫色の実を差し出すと。
イーヴは驚いたようにその青灰色の瞳を丸くした。
「お前、これはインクベリーだよ。この実には毒がある」
「……っ!」
「急いでそこに座らせて、水を持ってきて!」
イーヴは脇にいたシスターたちに手早く指示を出す。
レティは慌てて近くの椅子にソフィアを座らせた。
イーヴはシスターの一人が持ってきた水のピッチャーを手に取ると、ソフィアの口の中に指を突っ込み、大きく開けさせた。
気管に入らないよう注意しながら、水を流し込む。
やがてソフィアは水とともに食べた実を吐き出した。
苦しげにぐったりとしたソフィアをイーヴはそっと抱き上げ、奥の部屋へと運ぶ。
長椅子にソフィアを横たえた後、イーヴはシスターたちに手早く次の指示を飛ばした。