千の夜をあなたと【完】



<side.リアン>



――――冬の朝は暗い。

リアンはかじかんだ手にはぁっと息を吹きかけながら、井戸で野菜を洗っていた。

陽が上る前までに野菜を洗い終えてスープを作らなければならない。

リアンは野菜を洗った後、籠に入れて裏口から厨房に入った。


「ありがとな、リアン。そこに置いておいてくれ」

「おぅ」


リアンはテーブルの上に野菜を置き、脇の棚に置いてあった大きな鍋を手に取った。

なみなみと牛乳を入れ、火に掛ける。

リアンの褐色のくせ毛の髪が火を映し、赤く輝く。

その前髪の下の瞳は、新緑のような爽やかな緑色だ。


「それが終わったら、客室の片づけを頼んでいいかね?」

「了解」


リアンは言い、棚から木の椀をいくつか取った。

温めた牛乳を椀に一つずつ入れていく。


ここはアイリッシュ海に面した港町・リンクスの街道沿いにある小さな宿屋だ。

リンクスの隣には、コルウィンというそれなりの規模の町がある。


< 221 / 514 >

この作品をシェア

pagetop