千の夜をあなたと【完】
「放っておけばいい、が……」
しかしこの情報は、イーヴに対しては切り札になるかもしれない。
切り札は使いどころが肝心だ。
「……」
エスターはエリオットを退出させた後、席を立って窓辺に寄った。
あれからもう少しで一年になる。
――――そろそろ、頃合だろうか。
ティンバート家の者たちも街の役人達も、エスターに信頼の目を寄せている。
あと必要なのは……『お墨付き』だけだ。
うまくいくかはわからないが、こちらには最悪『切り札』もある。
「……そろそろ、行動に移すとしようか」
エスターはくすりと笑い、踵を返した。
その口元にはどこか楽しげな笑みが浮かんでいた……。
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