千の夜をあなたと【完】




「放っておけばいい、が……」


しかしこの情報は、イーヴに対しては切り札になるかもしれない。

切り札は使いどころが肝心だ。


「……」


エスターはエリオットを退出させた後、席を立って窓辺に寄った。

あれからもう少しで一年になる。


――――そろそろ、頃合だろうか。


ティンバート家の者たちも街の役人達も、エスターに信頼の目を寄せている。

あと必要なのは……『お墨付き』だけだ。

うまくいくかはわからないが、こちらには最悪『切り札』もある。


「……そろそろ、行動に移すとしようか」


エスターはくすりと笑い、踵を返した。

その口元にはどこか楽しげな笑みが浮かんでいた……。



<***>


< 225 / 514 >

この作品をシェア

pagetop