千の夜をあなたと【完】




イーヴは笑いながら腕を組んだ。

その腕も体つきも、一年前に比べてだいぶ男らしくなった。

一年前は少年のように見えなくもなかったが、今のイーヴはどこからどう見ても一人前の青年だ。


「奴は男爵だ。伯爵令嬢と結婚するには、多少身分が足りない」

「確かに……」

「そこでブラックストンのお墨付きが欲しいというわけだろう。あの男の考えそうなことではあるな」


くすりと笑い、イーヴは机の上の書簡を見た。

金の髪を揺らし、ふむと首を傾げる。


「……だがタダで認めては面白くないな。エインズワースの力を少し貸してもらうこととしよう」

「と、いいますと?」

「『諸島の王』の島々は、ここよりエインズワースの拠点であるロンカスタの方が遥かに近い。それなりに情報も持っているだろう」

「なるほど……」

「あの男の居場所の情報と引き換えに、認めてやると伝えとけ」


ブラックストンも情報網を持ってはいるが、より現地に近い方が有用な情報を手に入れやすい。

イーヴは言い、唇の端に笑みを浮かべた。



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