千の夜をあなたと【完】
――――ゼナスが部屋を出た後。
イーヴは胸元のペンダントを取り出し、裏返した。
ペンダントの裏には小刀でつけた傷が並んでいる。
「あれから280日、か……」
目を閉じると、脳裏にレティの顔が浮かぶ。
もう一年が過ぎようとしているのに、全く色褪せないその面影。
もう、この世で会えないのなら……
――――夢でもいいから、逢いたい。
毎夜繰り返される、切ない祈り。
あの、栗色の髪も褐色の瞳も……。
きっと自分は一生、忘れることはないだろう。
イーヴはぐっとペンダントを握りしめ、額に押し付けた。
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