千の夜をあなたと【完】




――――ゼナスが部屋を出た後。

イーヴは胸元のペンダントを取り出し、裏返した。

ペンダントの裏には小刀でつけた傷が並んでいる。


「あれから280日、か……」


目を閉じると、脳裏にレティの顔が浮かぶ。

もう一年が過ぎようとしているのに、全く色褪せないその面影。


もう、この世で会えないのなら……

――――夢でもいいから、逢いたい。

毎夜繰り返される、切ない祈り。


あの、栗色の髪も褐色の瞳も……。

きっと自分は一生、忘れることはないだろう。

イーヴはぐっとペンダントを握りしめ、額に押し付けた。



<***>

< 231 / 514 >

この作品をシェア

pagetop