千の夜をあなたと【完】
ぽそりと隣でライナスが呟く。
オーラフはしばし二人の姿を見比べた後、口を開いた。
「……で、何だ? 何か用があって来たんだろう?」
「はい、実は……」
レティとライナスはリュシアンの件について一通り説明した。
そしてオーラフのもとにリュシアンの情報が来たら教えて欲しい、ということも。
一通り話を聞いた後、オーラフはなるほどと言った様子で頷いた。
「ティンバートの息子か。だがこの一年、ティンバートの伯爵位を誰かが継いだという情報は俺のところには入ってきていない」
「……」
「エセルバート卿が執務を代行しているという噂は聞いたがな」
オーラフの言葉にレティは息を飲んだ。
エスターが執務を代行……。
となるとリュシアンは今、どこにいるのだろうか。
瞳を陰らせたレティに、オーラフは言った。
「……わかった。俺も少し探ってみよう。エインズワースほどではないが、それなりに情報網もある」
「ありがとうございます」
「もう少ししたら海も落ち着く。そうすれば現地で調査してもいいだろう」
オーラフの言葉に、レティはこくりと頷いた。
その後、二人はオーラフと少し歓談し、謁見室を辞した。