千の夜をあなたと【完】
その帰り道。
レティはライナスの隣を歩きながら、ずっと不思議に思っていたことを聞いてみた。
「……ねえ、ライナス」
「なんだ?」
「あの夜、ライナスはリュシアンを見たの? リュシアンに会ったりとか……」
レティの言葉に、ライナスは首を振った。
「いや。リュシアンの顔はおれも知っている。だがあの夜、おれはリュシアンとは会っていない」
「じゃあ、なんで行方不明に……?」
「それはおれも知らない。少なくともおれは手にかけていない」
ライナスは真剣な声で言う。
レティはうーんと首をひねった。
となると、リュシアンはなぜ行方不明になっているのか?
やはりこうなったら現地で探してみた方がいいのだろう。
レティは考え込みながら、家への道を歩いていった。