千の夜をあなたと【完】
2.セレナの悩み
<side.セレナ>
暖炉の火がパチパチと音を立てて燃えている。
揺らめく炎をセレナはじっと見つめていた。
窓の外には夜闇が広がっている。
――――あの事件から一年が過ぎた。
この一年、ずっとエスターはセレナの面倒を見てくれた。
けれどずっとこのままというわけにもいかない。
「……」
誰かと結婚し、夫となる人に伯爵位を継いでもらう……
そうしなければいけないとわかっている。
けれど、もし叶うなら……
その相手は、ケヴィンがいい。
どうすればケヴィンの花嫁になることができるのだろうか?
などと思っていた、その時。
コンコンと扉をノックする音がした。