千の夜をあなたと【完】
「……こんばんは、セレナ」
「エスター様……」
セレナが扉を開けると、エスターはにっこり笑って手にしていた本を差し出した。
「この間、エインズワースから届いた最新の詩集です。セレナが好きそうな内容でしたので、どうかと思いまして」
「ありがとうございます、エスター様」
セレナは顔を輝かせた。
エスターはいつも、セレナが喜びそうな本や花、楽器などを持ってきてくれる。
エスターがいてくれて、どれだけ心強かったか……。
セレナはエスターを部屋の中へと案内した。
――――そういえば。
ケヴィンの件について相談してみてもいいかもしれない。
セレナはエスターの隣に座り、エスターのアンバーの瞳を見た。
「あの、エスター様……」
「何でしょうか、セレナ?」
「こんなことをエスター様にお聞きするのも、恥ずかしいのですが……」
セレナは頬を染め、口を開いた。