千の夜をあなたと【完】




「……こんばんは、セレナ」

「エスター様……」


セレナが扉を開けると、エスターはにっこり笑って手にしていた本を差し出した。


「この間、エインズワースから届いた最新の詩集です。セレナが好きそうな内容でしたので、どうかと思いまして」

「ありがとうございます、エスター様」


セレナは顔を輝かせた。

エスターはいつも、セレナが喜びそうな本や花、楽器などを持ってきてくれる。

エスターがいてくれて、どれだけ心強かったか……。

セレナはエスターを部屋の中へと案内した。


――――そういえば。

ケヴィンの件について相談してみてもいいかもしれない。

セレナはエスターの隣に座り、エスターのアンバーの瞳を見た。


「あの、エスター様……」

「何でしょうか、セレナ?」

「こんなことをエスター様にお聞きするのも、恥ずかしいのですが……」


セレナは頬を染め、口を開いた。


< 237 / 514 >

この作品をシェア

pagetop