千の夜をあなたと【完】
驚くセレナに、エスターはそっと指を伸ばした。
……頬に触れる、少しひやりとした感触。
エスターのアンバーの瞳がじっとセレナを見つめる。
どこか熱く切ない、その瞳……。
鼻先をかすめる、甘い麝香の香り……。
硬直するセレナの目の前で、エスターの形の良い唇がゆっくりと動いた。
「……けれど男が求めるキスは、こういうものです」
――――言葉とともに。
エスターの唇が、セレナの唇に押し当てられた。
それは熱く、激しく、セレナの唇を溶かしていく。
……熱くて甘い、溶けそうな口づけ。
セレナは頭がぼうっとしてくるのを感じた。
エスターはしばらく口づけた後、そっと唇をはずしてセレナの瞳を覗き込んだ。