千の夜をあなたと【完】
「エスター様。どうやら、『諸島の王』はリュシアン様を探しているようです」
「……なに?」
「マン島からそのような情報が入りました。取り急ぎ何か、というわけでもなさそうですが……」
エリオットの言葉に、エスターはふむと首を傾げた。
……となると。
ちなみにブラックストンからの返事は、一か月ほど前にエスターのもとに届いている。
エスターはしばし考えた後、口を開いた。
「切り札はまだ使うわけにはいかないが、かといってブラックストンに偽の情報を掴ませ、敵に回すのは得策ではない」
「……」
「となると、仕組むしかないな……」
呟くように言ったエスターに、エリオットは尋ねた。
「……と、言いますと?」
「『諸島の王』に、リュシアン様はコルウィンにいるという情報を流せ。多分奴らは、そうすればコルウィンに来るはずだ」
コルウィンはティンズベリーの西にある、そこそこの大きさの港町だ。