千の夜をあなたと【完】
『そういえば。ブラックストンの若様に、御子ができたらしい』
『……』
『美男美女だという噂だからな。宮廷の御婦人方が舞踏会に出てくるのを今から楽しみにしてるそうだ』
レティの顔が一瞬で蒼白になった。
ん? と首を傾げたオーラフの前で、ライナスがレティを一瞥し、静かに口を開く。
『……では、リュシアンの件はまた後日詳細を詰めるとしよう』
『……あ、ああ』
『おれ達はこの後、用事があるので失礼する』
言い、ライナスはレティの腕をぐいと引いた。
ぽかんとするオーラフの視線の前で、レティは連行されるように謁見室を出た。