千の夜をあなたと【完】
「……レティ、……レティ!」
「……っ」
驚きのあまり声が出ない。
目を見開いたレティの耳に、熱に浮かされたようなライナスの声が忍び込む。
「レティ、おれを見ろ!」
「……っ、ライナス……」
「今、お前の傍にいるのはおれだ。これから先、ずっと一緒にいるのもこのおれだ!」
切なげなライナスの声。
レティはその言葉に心が震えるのを感じた。
……ライナスの心がレティの心に触れる。
触れ合い、ゆっくりと溶けていく……。
ライナスはそっと腕を解き、レティの両肩を掴んだ。
少し背を屈め、じっとレティの目を覗き込む。