千の夜をあなたと【完】
4.子供?
<side.イーヴ>
夏の湿気を含んだ夜風が回廊を吹き抜けていく。
城のホールでは煌々とした蝋燭の灯りの下、舞踏会が開かれている。
イーヴは遠目にそれを眺めながら、回廊の柱に寄りかかった。
あれからまだ、エスターから返事は来ていない。
恐らくまだ居場所は掴めていないのだろう。
ブラックストンでも調べてはいるが、『氷眼の狂剣士』はあれからすっかり鳴りを潜め、情報は全く入ってこない。
あの脅迫状に書いてあったことは全てやり遂げたので、もうウェールズに用はないといったところなのだろうか。
イーヴもすぐに居場所が掴めるとは思っていない。
これまでイーヴは、『氷眼の狂剣士』を追うことより自らの鍛錬や兵の強化に力を入れてきた。
例え居場所が分かっても、イーヴの剣の技量では返り討ちに遭う危険性の方が高かったからだ。
それでは復讐を果たすことはできない。
けれどそろそろ、本腰を入れて探してもいいかもしれない。